Mother, dear my mother,and only mother.
Sorry,I forgot your name long long time ago.
However,you will never die in my body.
Live forever.






母さん。
僕の記憶の中には、母さんしかいない。

初めて施設に来たとき・・・いや、”来た”という表現は間違ってる。
”連れてこられた”とき。

長い間狭い部屋に閉じこめられ、そのあと”訓練”を受けた。
閉じこめられてた部屋とは打って変わって、ものすごくでかい部屋に連れてこられた。
そこに、僕とおんなじくらいのヤツらがいっぱいいた。
となりにいたヤツが、話しかけてきた。
確か・・・いや、そいつの顔も思い出せない。
でも、話しかけられたのは覚えてる。
「訓練、がんばろうな!」
「うん」
そして、訓練を受けた。
やっぱり、何をしたのか覚えてない。ただ、受けたのは覚えてる。

しばらくしてまた別の訓練を受けた。
今度も、何をしたのか覚えてない。
ただ、すこしだけ不思議に思った。
訓練が始まる前に僕のとなりにいたヤツがいない。
・・・・なんで?

そうやってまた訓練をうけた。
何回も。何回も。
気づけば、僕のまわりには5.6人しかいなかった。
いっぱい、いたのに。
みんな、どこへいったんだろう?

その後の日々は、あんまり覚えてない。
思い出せないんだ。
ある日気づいたら、でっかい機体を動かせるようになっていて。
また別の日に気づいたら、銃の扱いができるようになっていた。
そしてまた別の日に気づいたら、僕は人を殺していて。
殺しても、何の感慨もわかないようになっていた。
いつの間に?
いつの間に僕はこんなんになってしまったんだろう。
それすら、思い出せない。


そして気づいた。
・・・・あれ?
母さんが、いない。


いつか、母さんに聞いた事を思い出す。
「なんでひとが減ってんの?」
「みんな、おうちへ帰ったのよ」
「おうちへかえれるの?なら僕も帰りたい」
「だめよ。訓練をうけないと」
「・・・やだ」
「私がいるから。あなたの側にいるから・・」
「ほんとに?」
「ええ。だから、訓練、受けるわね?」
「・・・うん」
ウソツキ。


そしてまたある時、気づいた。
突然、僕の中の母さんの記憶は、恐怖に変わっていた。
恐怖だ。
止めどなく溢れる恐怖。
頭の中を占める、途切れることのない恐怖。 
僕の記憶の中の母さんは、すごくやさしい顔で笑ってるのに。
母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん・・・。
なんでいない。
僕は訓練うけたよ。母さんの言う通りにしたよ。
母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん・・・。
でっかい機体を動かせるようになったんだ。
銃もうてるよ。ホラ。
すごいでしょ?
母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん母さん・・・。
人を殺してもなんにも感じないんだよ。ううん。逆に嬉しいんだよ。
すごいでしょ?


なのに。
なんで母さんは、いない?
なんでいない!!!




ウソツキ。







[初出 2006.10.27]