2. プラント最高評議会。ここでは連日議会が開かれていた。 こんなに頻繁に議会が開かれたのは先の大戦以来。 議会の論点は・・・・先日、突如ダータネルスに現れた過去の英雄・・・フリーダムとアークエンジェル。 オーブのユニウス条約違反の露呈。 この事実に対する今後のオーブへの対応について、だ。 しかし、今日、またもや英雄は現れたとの情報が入った。そして、わが軍、ザフトに甚大なる被害を与えた。 被害を被ったミネルバの館長・タリア・グラディスの最高評議会への被害状況の報告をかねて、またもや緊急に議会が開かれたのだ。 「やはり・・・オーブは信用ならん!!」 「先の大戦でも”G強奪作戦”がなければどうなっていたことか!!」 「戦後もオーブの難民達を、戦後大変な時に多大な税金を費やして受け入れたというのに!!」 「まさか・・・平和を声高に訴えてきたオーブが・・・ユニウス条約違反とは・・・!!」 戦後、ザラ議長率いるタカ派、つまり強行派は最高評議会から一掃され、今はデュランダル議長を指示する穏健派の議員が最高評議会を占めている。 しかし、何も知らない市民がこの議員達をみれば、みなタカ派だと思うかもしれない。 それほどまでに、議論は激しくなっている。 しかし・・・・とタリアは思った。 この議会の紛糾ぶりは、異常だ。 いや、異常ではなく、これが正常なのかもしれない。 オーブの元国家元首と条約違反の核エネルギーを使用している機体が戦場に現れ、ザフトに、そして条約を結んでいるはずの地球軍にも攻撃したのだ。 タリアは、数時間前の無惨な有様を思い出して、唇をかんだ。 議員でなくても混乱する。 これはいったいどういうことか、と。 戦争を止めたいといいながら我が軍に被害を与えた、しかも自分たちの条約違反・テロ行為は棚上げ。 オーブ政府は断固としてこの事実を否定、政府の手によるものではないと黙秘を続けているが・・・。 「みなさん、落ちついてください」 最高評議会のデュランダル議長の一声で議員たちは声を止める。 「まず、グラディス艦長の報告を聴きましょう。現在の状況を正確に把握しなければなりません。それからです」 議員たちは、ぐっと押し黙る。 いくら今現在議員達の目に映っているのは自分のホログラム映像とはいえ、この雰囲気で報告とは・・・気が重い。 ハァ、とため息をついて、タリアは中央に進み出た。 「ザフト軍ジブラルタル基地より通信。ミネルバ艦長、タリア・グラディス。現被害状況を報告せよ」 『はっ。まず、我が艦ミネルバは先日のように突如戦闘に介入したフリーダムに発射寸前の艦首砲を打たれ、その衝撃によってミサイルに誘爆し、付近に待機していた整備士8名が負傷。そのうち2名が死亡。4名が重傷。2名は軽傷』 みるみるうちに議員たちの表情が凍り付く。 『その後、予期せぬオーブ元国家元首の戦闘介入により戦場は混乱。パイロット2名が死亡。1名は軽傷、そして・・・』 そして、ふとタリアは口をつぐんだ。 「・・・どうした、グラディス。報告を続けろ」 『・・・はい。もう一名は意識不明の重傷です』 議員達は、押し黙った。 『我が軍はこの被害をうけ、フリーダム及びアークエンジェルを敵艦と認知し攻撃しました。これは正当防衛の原則に則った行為と判断しました』 「これを認める。その他に報告は?」 『・・・ありません』 「これほどの被害を・・・!!」 「オーブ政府は?!」 「政府の介入ではないと、現国家元首のユウナ・ロマ・セイランは報告をよこしたが・・・」 「どうだか!!まるで自分の首を自分で絞めている馬鹿としか思えん!!」 「地球軍の対応は!!?」 「未だ何の報告も出ていない」 もうこれは議会ではない。 おそらく、オーブ政府にしても地球軍にしてもとんだとばっちりのはずだ。 しかし・・・と考えて、タリアはちら、とデュランダルの方を見た。 プラントに、ザフトにとっては好都合だ。 オーブという、”悪役”がわざわざ出てきてくれたのだから。 敵軍の艦の利用・核エネルギーの利用という、プラント市民に対する冒涜を犯した”悪役”は、プラント市民、ひいては地球のナチュラル達の怒りを増幅させる。 地球軍にしても、このまま”悪役”に手を貸したままでは市民の怒りを一斉に買うため、オーブの軍事力を利用するわけにはいかない。 よって、地球軍の戦力の低下のきっかけとなる。 情報操作がある程度行われるだろうが・・・長くは続かないだろう。 結果、我がザフト軍にとって、有利に戦局を運べる。 ”悪役”を打つという正当な理由があり、怒りもある。 溜まりに溜まっていた怒りが、憎しみが、ザフトを後押しする。 ・・・・それもわかってて、あなたは”彼”を戦場へ送り込んだっていうの? 彼が、フリーダムとアークエンジェルを戦場へおびき出す”エサ”であることをわかってて、フェイスに任命し、ミネルバに配属したの?・・・・ギルバート。 彼は今、死にかけているのよ・・・・!! タリアは、今度ははっきりと議長を見つめた。 彼は・・・・笑っていた。 彼・・・ギルバート・デュランダルという人は、これ以上に先を見ていたことに。 ”彼”を使った訳はもっと他にあったことに。 タリアが気づくのは、戦局も進みすぎた頃となる。 BACK TOP NEXT |