28. 画面上。 どす黒い巨大な煙が基地全体を包み込む。 黒い煙の波に飲み込まれるのは、数十、いや、数百メートルはあろう戦艦、そしてモビルスーツの数々。 その総数は、ざっと見積もっても数え切れないほどある。 暗い部屋ながら、画面上の圧倒的な光景は、その場にいる人間の目に鋭く焼き付いた。 コトリ。 「オペレーション・ヴァルハラ、終了か・・・・」 燃え上がる華南が映し出されている画面を見ながら、テーブル上のチェス盤の一つの駒をとる。 そして一マスだけ進める。 暗い静かな、しかし広い部屋に、その音と声はよく響いた。 もちろん・・・目の前に座っている、彼らの耳にも。 暗い議長室。 デュランダル議長の向かい側。 通常は来賓が腰を下ろす、そのソファに座っているのは2人の少年。 1人は何を考えているのか掴めない飄々とした顔で、映し出される画面を見ている。 もう1人は閉じていた目を、今、ゆっくりと開けた。 現れた翡翠色の瞳は、鋭い戦士の目。 冷たく、そして鋭い瞳を携えて・・・・彼は言った。 「時間だ」 おもむろに立ち上がった彼を見て、もう1人の飄々とした少年も何か面白い物を見つけたような、いたずらっ子のような顔を彼に向けて立ち上がる。 「・・・・んじゃ、行きましょうか」 と、重たい扉を開け、一人の少女が議長室に入って来た。 立ち上がった2人の少年を見て、少女の顔は一瞬不安そうに歪められた。 しかし、それもほんの僅かな間だった。 すぐに真剣な表情に戻った少女は、ゆっくりと口を開いた。 「アスラン、・・・・・行くのね」 真剣な表情の少女と視線をあわせた彼は、軽く微笑んだ。 「・・・ああ。ミーアも、頑張れ」 そう言った彼の笑顔・・・・もう見慣れてしまった悲しい笑顔。 それを真横で見たラスティは、ふいと視線を反らした。 少女に向けられた間のみ鋭さが消えた彼の瞳が、再び戦士の色を帯びる。 「・・・・行くぞ」 その声が引き金となり、飄々としていた少年の顔にも彼と同じ鋭さを携えた戦士の目が現れた。 ただ、彼の瞳が碧色なのに対し、その横の少年の目は・・・空色。 よく晴れた、快晴の空色。 「・・・・ああ」 コツコツと、歩き出した2人の足音だけが奇妙に響く。 2人がドアの側まで来たところで、ようやくデュランダル議長が立ち上がった。 議長は先ほど柔和な顔で微笑み、チェスの駒を弄んでいた顔とは全くの別物とも言える真剣な眼差しで、部下である2人の顔を交互に見つめた。 そして、・・・・プラント最高評議会議長は目の前の白服と黒服の2人の部下に対し、現時点で最重要且つ最難関の任務を下した。 「オペレーション・ワルキューレ。開始だ」 薄暗い議長室の、テーブルの上のチェス盤上に、 2つの黒のナイト。 彼らの射程距離に入ったのは・・・・どの駒なのだろうか。 BACK TOP NEXT V.<舞う戦士達>編 |