30. 「隊長、デュランダル議長がプラントから緊急メッセージを!」 漆黒の宇宙に浮かぶ戦艦。 その艦の通信士の女性は振り返り、自分の数メートル後方に立っている白服の男に告げた。 どことなく不安な表情を浮かべる通信士とは反対に、男は「・・・モニターに繋げ」と腕を組んだまま冷静に答える。・・・・・まるで、初めからこうなる事を知っていたかのように。 ややあってモニターに現れたのは、ある人物の端正な顔。 そう、ザフト兵ならば、いやザフトに属する人間でなくともよく知っている、ある人物の、顔。 『みなさん、私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです』 その声と被せるように、男は「映像は艦内の全モニターに映せ。・・・音声もだ」と、通信士の女性に向かって、その整った顔を向ける。 『なぜ、戦争も終結していないこの時勢に、このようなメッセージを皆さんに送るのか・・・。それは一重に、全人類のみなさんに、事実をありのままに、知って頂きたいと思ったのです』 しっかりとした意志の感じられる顔で、デュランダルは続ける。 と、それまで組んでいた腕を解いた男は、自分の前に座る黒服の背中に向かって「速度はそのまま。・・・・もうすぐだ」と声をかける。 その声に反応した黒服が、「了解しました。任務は確か・・・」と言いかけて、白服の方を振り返る。2人はお互いの顔を見て、確かめるように、ゆっくりと頷く。この2人の間には、信頼という名の繋がりがある。 「目標と”鍵”を、回収する。それが、”オペレーション・ワルキューレ”における、我々の任務だ」 * 『シン。今日の任務が終わったら、話がある』 あれ・・・・?ここ、どこだっけ。 あ、そうか。ミネルバの、俺とレイの部屋だ。 確かオペレーション・ヴァルハラが始まってすぐだったような気がする。レイは真剣な顔で、話があるって言って。でも話が長くなるから、任務が終わってからな、っていうことになって。 その日の夜だった。レイは真剣な顔で、俺にこう言ったんだ。 『俺は殺す』 ころす?誰を。 『アイツは俺の大切な人を殺した』 たいせつなひと? 『そうだ。俺にとって、その人は俺の存在の理由、そのものだった』 りゆう・・・・? 『なのに・・・アイツが・・!!よりによって、アイツが!!』 あいつ? 何言ってるんだよ、レイ。 『・・・・ロドニアの研究所、覚えてるか』 うん。あのときレイ、大変だったよな。どうしたんだよ? 『・・・・俺はクローンだ。もうじき死ぬ』 え・・・!? 『テロメアが短いんだ』 てろ、めあ・・・? 『だから俺は殺す。必ず』 レイ、そんなこと言うなよ。クローンだかなんだか知らないけど、レイが死ぬなんて、 あるはずないだろ。 『なんでそう言える』 だって。だってそんな、急に 『人の死は突然に訪れる。みな突然死ぬ。殺される。お前も散々見てきただろう?』 そう言うレイの姿が、すっと音も無く遠ざかって行く。 シンは必死で、遠ざかるレイの背中に問いかける。 ・・・・レイもそうだ、って言いたいのか!? その声に反応するように、ゆっくりと振り返ったレイの口が力無く動く。 その声と表情は、シンが今まで聞いたどの声よりも冷たかった。 『俺は殺す』 レイは再び遠ざかる。もう振り向かない。背中が消えそうになる。 『フリーダムのパイロット・・・・・キラ・ヤマトを』 レイ!!行くなよ。行くな、逝くな、そんな簡単に!! 「レイ!!!!!」 ぼやけた視界に、白い天井と蛍光灯が映る。 重すぎる頭を横に向けてみる。今度は、白い壁と灰色の棚。棚にのっているのは、様々な瓶類。 ・・・医務室らしい。ぼんやりする頭でそう判断したシンはふと、顔をしかめた。 なんだろう、この感覚は。どこか浮遊するような感覚、 懐かしい感覚。 ああ、・・・それにしても体が重い。頭も、痛い。 「ああ。俺だ。ジンをここに呼べ。・・・・大丈夫だ、あと20分ある」 誰かの声と、こちらへ歩みよってくる足音が頭の奥底に響く。先ほどと同様にぼやけた視界に映ったのは、しかし無機質な背景だけではなかった。 「それだけ大きな声が出せれば大丈夫だな。シン・アスカ君」 「・・・・レイ・・・・?」 ぼやけた視界に映った金髪の髪と、その顔立ち。レイ、と思ったのもつかの間、次の瞬間、目の前の男はレイでなく、年齢も雰囲気も全く異なる別の顔になった。 どうやら、見間違えたらしい。 「レイ?俺はレイとかいう名前じゃないぞ」 目の前の男は、不審そうに眉をひそめる。 「あ、ちが・・・、くっ」 腹の辺りに走る痛みに、否定の声をさえぎられる。腹のあたりに手をあてて探ってみると、おそらく誰かに着せられたであろう半そでのシャツの下には、・・・・白い包帯。 あれ?いつ、なんでこんな怪我を・・・?そんな疑問を抱きながら、シンはゆっくりと上半身を起こした。そして、段々はっきりしてきた記憶を必死に呼び出した。そうだ。目の前にいるこいつは、レイじゃない。こいつは・・・・!! 「レイ、じゃなくてな。俺は・・・」 「あんた・・・ネオ、か?」 その声に、男は少し表情をほころばせて、答えた。 「覚えていてくれて嬉しいよ。あの時は、ステラを、」 「嘘つきやろう」 シンは、怒りに満ちた声で吐き捨てた。 目の前の男は、何も言わない。黙ったまま視線を斜め下に泳がす。その仕草が、余計にシンの神経を逆撫でした。 「あんたが・・・!あんたがステラを幸せな世界に戻すって・・・!戻すって言ったから信じた!!だからステラを返した!!それなのにあんたは、あんなでかい機体に乗せた!!また戦わせた!!あんたみたいなヤツにはわかるハズないから教えてやるよ!!ステラはすっごく優しい子で!!!あんた達大人が戦場に送り込んで、勝手に、!?」 唐突に腹に激痛が走る。 声にならない呻きをあげると同時に、頭がおかしくなる。思考を停止したいのにできない。傷の上から腹を殴られたシンは、こらえきれずベッドの上で前かがみになる。 しかし、その激痛を与えたのは、横にいるネオではなかった。 「ザフトが知ったような口をきくな!!」 シンに激痛を与え、声を荒げた目の前の少年。いつの間にこの部屋に入ってきたんだよ、こいつ。ネオの部下か?いや、こいつの声も聞いたことがある・・・!?そう叫ぼうとした口からは、むなしく声にならない呻きが漏れる。しかし負けじと睨み返すシンの視線は、その少年の第二声によって蹴散らされた。 「大佐がどれだけの思いをしたと思ってる!?お前がステラの何を知ってる!?スティングの、アウルの何を知ってるっていうんだ!!陳腐な同情をかけたくらいで、調子に乗るな!!」 「ジン。もういい」 「しかし、大佐っ!!」 「時間がない。始まったんだろ?例の演説は」 「っ・・・はい」 「そうか・・・。こちらも、うかうかしてはいられないようだな」 シンは段々和らいできた痛みから神経を戻し、ゆっくりと顔を上げる。 ネオの横にいるのは、どうやら華南でステラと通信していた声の主らしい。 どっかで見たことがあるような気がするんだよな、こいつ。 シンがそう考えていると、その少年はこちらの視線に気づいたらしく、「ジン。ジン・フォークランドだ。階級は・・・取りあえず、中尉だ」と、なんともそっけない自己紹介をした。 とりあえずって、なんだよ。 心のなかで悪態をついたシンは、その、ジンと名乗った少年を睨む。 その少年は、見たところシンと同じくらいの年齢だった。整っているというよりは、むしろ幼さとあどけなさ、あるいは優しさを併せ持ったような顔立ちだった。 しかしそれとは対照的な鋭い目と固く結ばれた唇が、その面持ちを消し去っている。顔に似合わず怒りしか示さない表情と、何の感情も含まれていないような冷たい口調も、それを助長していると言っていい。 それになんだよ、害のなさそうな顔しているくせに、おもいっきり殴りやがって。 先ほど殴られた腹をさすりながら、「ここ・・・どこだよ?」と苛立ち混じりに問いかける。 しかし次に発せられた言葉は、シンの苛立ちを吹き飛ばすのに十分だった。 「ここは、・・・・地球軍・第81独立機動群・ファントムペイン所属艦、ガーティ・ールーの医務室」 「・・・は!?」 「今走行しているのは宇宙。正確に言えばデブリ帯を越えた辺り。現在はL3を走行中だ」 「え!?ちょ、なんだよ、それ!!」 驚いて目を丸くしたシンを無視して、極め付けにネオが「それから、キミは記録上、華南で戦死したことになってるぞ」と本日何度目かの衝撃を与えた。 「ちょ、ちょっと待てよ!何言ってんだよ!」 連合?宇宙!?戦死!!?? なんだよ、それ!!俺、さっきまで華南にいたよな!?・・・じゃあ、 「オペレーション・ヴァルハラはどうなったんだよ!?」 華南でオペレーション・ヴァルハラを実行している最中。 シンは大きな爆発に巻き込まれた。そして、それからの記憶がない。 それなのに、目が覚めたら殴られて、ここは地球軍の戦艦だ、そのうえ宇宙で、事もあろうか、・・・戦死だよ、なんて言われて。 ・・・そんなの信じられるかよ!? 「呑気なヤツだな。仮にも自軍の作戦名を敵軍の前で言うとは」 ジンが、ドア付近の壁に背中を預けながら言う。 こちらを見ているその顔には明らかに、軽蔑と嘲りが汲み取れる。 ムッとしたシンを見て、「そう言えば、キミは何も知らないんだったな・・・」と苦笑したネオは、「ジン。ディスプレイを」と言った。 「ご覧になるのですか?」 まるで不意打ちといわんばかりの表情を見せたジンに対し、ネオは「手っ取り早く現在の状況を伝えるには、これ以外ないだろう」と、飄々と答える。 そっけなく「わかりました」と、ジンが答えた瞬間。 『____こそ、みなさんに知っていただきたいのです』 「議長っ・・!?」 映し出されたのは、プラント最高評議会議長・ギルバート・デュランダル。そして、その横に寄り添うようにして立っている、ラクス・クライン。 「・・・・まんまと利用されたな。お前」 画面の電源を入れたらしいジンは、嘲るようにはき捨てた。 その言葉の意味もわからないまま、シンはベッドの備え付けの小さなディスプレイを見つめる。画面の中のデュランダルは、しかしシンの知る、優しい、そして正義感に溢れた顔だ。 そう、あの日。 シンとレイに、新しい機体を託してくれたときのように。 『これは、本日行われた華南基地での、戦闘の様子です』 デュランダルの口がそう動いたかと思うと、画面がぱっと切り替わる。と、砂塵にまみれた、見慣れた都市の映像が、画面いっぱいに広がった。 そう。これは、華南。紛れもなく、数時間前までシンがいた都市の映像だった。 『そしてこれは、連合の新型兵器が侵攻したときの様子です』 映されたのは、デストロイ。閃光を発した、ステラのデストロイ。 『この機体は、連合のベルリンを焼いた機体と類似しています。ベルリンでの悲劇を繰り返してなるものか・・・!!そう思い、我々ザフトは、抵抗する市民の要請を受け、立ち上がりました』 画面が切り替わる。次に映ったのは、デスティニー。デストロイと対峙するデスティニーに、『我々も、この新型兵器を前にし、必死に抵抗を試みました・・・!!』という議長の悲痛な声が重なる。 と、シンは違和感を覚える。 あれ?俺は、デストロイを打とうとして近づいたんじゃない。ただ、ステラを落ち着かせようとしただけなのに・・・・?それに俺、勝手に飛び出していって、作戦の中にこんなこと・・・なかったよな? シンが首をかしげた瞬間、画面はまた切り替わった。 今度はレジェンドと・・・フリーダムだ。 『しかし、再び乱入したテロリストたちによって、戦局は混乱を極めました・・・!』 レジェンドとフリーダムは必死の攻防を繰り返している。そして、次にはミネルバとアークエンジェルが戦う様子が映し出され、最後に巨大などす黒いキノコ雲が画面いっぱいに広がり、そこで映像は途切れた。 画面は、再びデュランダルに切り替わる。 『どうしたことでしょうか!我々は市民と共に手を携え、力を合わせ、戦おうとしていたのに。なぜ、彼ら・・・アークエンジェルに乗るテロリストたちは、こうやって戦局を混乱させるのでしょうか!無駄な犠牲者を、多数出すのでしょうか!?』 しかし、必死に訴える議長を見て鼻で笑ったジンは、「これでわかっただろう?ミネルバは対アークエンジェル用の捨て駒だ」とはき捨てた。明らかに議長と自分たちを下に見た態度に怒りを覚えたシンは、次の瞬間には反論していた。 「バカ言うな!俺たちミネルバは華南侵攻の手伝いをするためにカーペンタリアまで来たんだ!!捨て駒のわけないだろ!!」 しかし対するジンは、その軽蔑の表情を崩さずに答える。 「バカはお前だ。お前たちミネルバが、本当に華南侵攻のためだけに、わざわざジブラルタルからカーペンタリアまで行かされたと思うのか?」 「え・・・だって、赤道連合の人が助けを求めてきたんだし、それに華南は兵力とか、装備とかも他の地球軍の基地よりも劣ってるから落としやすいって、」 「冷静に考えてみろ!兵力も装備も他の基地より劣ってる華南を打っても、ザフトにとって何の利益もないだろうが!!」 シンは絶句した。・・・・確かにそうだ。上官の人たちは、華南は兵力も装備も少ない、事を有利に運べると言った。たしかにそうだろう。でも、兵力も設備もわずかなひ弱な基地を打っても、何も変わらないんじゃないのか・・・・?そしてわざわざそのためにミネルバは、燃料と人員を割いてまで航路を逆流する必要があったのか・・・?しかしシンは、「で、でも!華南基地は、ユーラシア西側の地域の独立に反対してるみたいだし、 華南の戦艦は、ユーラシア西側に攻めてくることだってあるって、上官が、」と反論する。しかしジンは、「兵力が落ちてる華南の力なんて、たかが知れてる」と切り捨てる。 「確かに、華南が無くなれば多少の兵力低下になるだろうが、・・・・大西洋連邦や、華南のすぐ北に位置するユーラシア連邦はピンピンしてるんだ。いっそう激しくなることはあるにしても、攻撃の手が収まるなんてことは、ありえない。華南という都市に住む一般人を人質に、交渉を進めるという手段もあるが・・・・やったところで、元から捨て駒扱いだった華南だ。そこに住んでる人間のために屈するほど、連合が慈悲深いとは・・・・到底、思えない」 冷静にそう言ったジンと自分の中で沸き上がりはじめた不安に対し、「でも!」とシンは声を荒げる。 「じゃあ・・・じゃあ、アークエンジェルはどうなるんだよ!?お前、ミネルバは対アークエンジェル用の捨て駒だ、とかなんとか言ったよな!?でも、アークエンジェルは勝手に介入して来たんだ!どこにいるかもわからないようなテロリストが、華南に現れるなんて・・・そんなこと、誰にも予想できるはずが、」 「いい加減理解しろ!!どこに潜っているかもわからないようなアークエンジェルをおびき寄せるために行われたのが、この華南侵攻作戦だったんだ!!」 「え・・・!?」 「華南は、地球軍の中でも、地理的にオーブに最も近い基地だ!当然、華南で大規模な作戦が行われるならば、同盟を結んだオーブ軍も参加せざるをえないだろうが!・・・それを知ったアークエンジェルの連中はどうすると思う?当然のように現れ、戦闘に介入するに決まってる。なんせ、戦争を止めたい、とかなんとかいうバカな正義感で動いてる連中だ。来ないわけがない」 そう言ったジンは、自嘲とも軽蔑ともつかない笑みを浮かべる。 「・・・・じゃあ、俺たちは、アークエンジェルをおびき寄せるために・・・?」 「それだけじゃない。華南侵攻作戦のもう一つの目的は、アークエンジェルをミネルバと戦わせ、世界中の目を華南に向けさせる事。“真のオペレーション・ヴァルハラ”・・・・ロゴスメンバーの居場所を突き止める作戦を、円滑に行うための”保険”だ」 「なんだよ、それ・・・!!」 「だから言っただろ?“ショータイム”だって」 華南侵攻作戦は、たとえるなら仕組まれた喜劇。ステージは華南。主役を演じるのはミネルバ、そしてアークエンジェル。観客は・・・連合の幹部にクライン派、そして世界中の人々。戦艦の必死の攻防、MSのパイロットの互いの命をかけた戦いに、観客たちは息を呑む。知らず知らずのうちに、その喜劇に引き込まれていく。 そして、クライマックス。巨大な爆発。観客の誰もが目を奪われる。夢中になる。どうなった。ミネルバは、アークエンジェルはどうなった。 そう。・・・もちろん、気づかない。 観客はもちろん、演じている本人たちですら、これが仕組まれた喜劇なのだと。 その裏、ライトが当たっていない暗闇の中で、生れ落ちた”鬼”が、動き出す準備をしていたのだと。 ・・・そしてもう、取り返しのつかないところまで来てしまったのだと。 そう・・・・すべてを意のままに動かした、演出家。 「デュランダルの仕組んだ、巨大なショーだ」 もはや自嘲や軽蔑ではなく、ただ恐怖を顔に浮かべてそういったジンの言葉が、シンの頭の中で反響する。議長が・・・?ショーって・・・。じゃあ、ミネルバは。 レイは、メイリンはヨウランはヴィーノは。艦長や副長・・・・みんな、みんな。 アークエンジェルをおびき寄せるため、そしてただ、なんだかわからない作戦から世界中の人の目をそらすため、ただそれだけのために。 必死に戦って、爆発に巻き込まれて。 ・・・俺、は。こんな、こんな怪我までして。 ただ、そんなために・・・!! “私は君を信じている” そう言った議長。託すと言ってくれた議長。平和を望んでると言った、議長。 “君も全力を尽くしてほしい” ベッド脇のディスプレイを、すがるように見つめる。そこにはやはり、あの時と変わらない顔。正義感に溢れた、議長の顔。すべてを仕組んだ?この人が?・・・・そんなことがっ! 「そんなことっ・・・・あるわけ、ないんだっ!!」 ともすれば溢れそうになる涙を抑えるために、そしてただ、己の中で湧き上がる絶望を拒否するために、シンは強く握り締めていた拳を壁に叩きつけた。 「議長がそんな、全部仕組んだなんて、そんなのありえない!!」 議長は、俺もレイもミネルバも、大切だって思ってくれる人なんだ。そんな議長が、 「そんなことするわけがない!!そんな、そんなのまるで、ミネルバは・・・」 「“プロパガンダ。”」 突然、シンの言葉をさえぎったジンが、ぽつりとこぼす。 「“ギルバート・デュランダルによって、新たに作られた英雄。それがミネルバだ”」 「ちょ、お前何言って、」 「“だが、英雄は2人もいらない。過去の英雄には、盤上から退場してもらう。”」 誰かの言葉をそっくりそのまま言っているような、まるで意思の感じられない瞳を向けたジンが、シンを正面から見据えて言った。 「“俺は殺す”」 シンの頭の中で、その言葉が先ほどのレイの言葉と重なる。 『俺は殺す』 そういったレイ。そして目の前のジン。ジンと重なるレイ、そしてなぜか・・・・。 アスラン。 彼の姿も、2人に重なって見える。 ジンを通して見えるレイとアスランは、まるで全てを射抜くような冷たさでシンを見下ろしている。 ぞくりと背筋が凍りついたシンが、なんで、と思った瞬間。 『船員、第一戦闘配備』 突然の艦内放送が、シンの鼓膜を強く打った。途端に、ジンとネオの目に緊張が走る。 「来たか」 ぽつりとこぼしたネオが、眉をわずかにひそめる。 「アスラン・ザラが、・・・鬼が、動き出す」 そう言って拳を握り締めたジンの言葉が、やけに大きく天井に反響した気がした。 BACK TOP NEXT |